1.無添加とは?
・【定義】どういう条件で無添加と言えるのか?
・【判断方法】「すべてが無添加」の商品の見分け方
2.「界面活性剤」について
・【作用】界面活性剤とは?
・【目的】界面活性剤の役割
・【分類】界面活性剤の種類
3.合成界面活性剤について知ろう
・【用途】合成界面活性剤は何の目的で使うのか?
・【化学的分類】合成界面活性剤の化学的分類
・【原料分類】合成界面活性剤の原料分類
・【安全性】「石油系合成界面活性剤」は危険なのか?
4.合成界面活性剤とどう付き合っていくか?
・【確認】合成界面活性剤の存在意義と現状
・【考え方】合成界面活性剤は「正しい理解」が大事
1.無添加とは?
最近、とは言ってもかなり前からですが「無添加」という言葉をよく聞きますよね。食品でも洗剤でも化粧品でも「無添加」という言葉がキーワードになっています。「無添加」にこだわる方もかなりいらっしゃいます。でも「無添加」のことをちゃんと知っていますか?
【定義】どういう条件で無添加と言えるのか?
「無添加」とは「すべての添加物が一切入っていない」ということだと思っていませんか?違うんです!実は「添加物が1種類入っていないだけでも無添加と言える」のです。
「無添加」とは「すべての添加物が入っていない」という意味ではない
例えば、ある化粧品に香料が入っていないとします。しかし、その化粧品に他に、着色料・防腐剤・シリコン・合成界面活性剤が入っていたとしても、「無添加の化粧品」として販売することができるのです。(もちろん大々的に「無添加」とだけ表記するのは法律的にNGですよ!後で詳しく説明します!)
洗剤を例にした場合、商品説明に「蛍光剤、漂白剤、着色料無添加」と書いてあったとしても、実は「蛍光剤、漂白剤、着色料(が)無添加(だけど、成分表示には他の添加物名が書いてある可能性がある)」という意味なのです。ですから、しっかりと成分表示を確認しなければ、商品に何の添加物が入っているかはわかりません。
「無添加」の表現は「何が無添加」なのかを記載しているだけ
例えば、化粧品業界において、化粧品公正取引協議会は「化粧品の表示に関する公正競争規約」で下記のように定めています。
【「無添加」、「無配合」、「不使用」等ある種の成分を配合していないことを意味する用語を表示する場合は、何を配合していないかを明示すること。】
つまり、「何が」「無添加or無配合or不使用なのか」を書くように定めているのです。無添加とはあくまでも、「配合されていない一部の添加物に対して」述べているということです。
薬事法ではどう定められているのか?
薬事法の観点から見ても「無添加」とだけ書いて「どの成分が無添加なのか」を明記していない場合は当然NGです。
薬事法第66条にて、<「無添加」について表記する場合は、説明部分に添加していない成分を明示し、かつ、保証的にならないように配慮(キャッチフレーズなどに書かないなど)する>ということが書かれています。
つまり、「無添加と表記する場合は、『説明部分』に何の成分が無添加なのかを記載して、誇大な広告にならないように『注意しましょうね』というわけです。
だから、あらゆる商品において、何が無添加なのかは「成分表(成分の説明書き)」を見なければ分からないし、商品のキャッチフレーズの「無添加です!」だけでは判断できない、ということなのです。
【判断方法】「すべてが無添加」の商品の見分け方
例えば、分かりやすい一例として「石けん」について考えてみましょう。
すべての添加物が入っていない石けんの見分け方
・石けん素地が100%(または98%)の記載があるか?
・成分表示に添加物名や合成界面活性剤が並んでいないか?
例えば、無添加石けんで有名な「シャボン玉石けん」の成分を見てみましょう。
【成分】石ケン素地
これだけです。これがつまりは「一切の添加物を使用していない無添加石けん」というわけです。わかりやすいですよね。
かといって、添加物が入っている商品、つまり「合成界面活性剤」が入っているすべての商品が悪いものであるというわけではありません。次に界面活性剤について考えていきましょう。
2.「界面活性剤」について
【作用】界面活性剤とは?
水と油って、混じり合うことができないですよね。界面活性剤はこれを混じらせて、一つにすることができるのです。二つの異なる性質の物質の表面(つまりは界面)に作用するのが、「界面活性剤」の役割です。まず界面活性剤がないと、化粧品や洗剤や、さらには食品や医薬品などを作ることができません。だから私たちの日常に「界面活性剤」は不可欠なのです。
【目的】界面活性剤の役割
洗浄・発泡作用
つまりは、シャンプーや洗剤ですよね。「洗浄」で汚れを落として、「発泡」で泡立ちます。
乳化作用
食品や医薬品、化粧品でよく使われるのがこの「乳化作用」の目的です。成分表示する際は、「乳化剤」と書かれます。先に書いた通り、二つの異なる性質の物質の表面(つまりは界面)に作用する性質を生かしています。
例えば、主に水分と油分から成り立つ化粧品は、界面活性剤のおかげで混ざり合い分離しなくて済むのです。分離してしまうと、ドレッシングのように油と水が分離して二層に分かれてしまいます。化粧品で言う油分はつまりは美容成分です。界面活性剤を使わなければ、化粧品の成分が均一に混ざらなくなり、使用するたびに成分の偏りが出て、常に均一の効果を得られなくなってしまいます。(ドレッシングを振らずに食べると、油だけの部分が野菜にかかっておいしくないですよね。)
界面活性剤は、成分の分離を長時間防いで一つにまとめる作用があるのです。
【分類】界面活性剤の種類
界面活性剤には、大きくわけて2種類あります。
天然界面活性剤
自然界に存在する界面活性剤です。天然物質としてもともと自然界の中に存在します。
例えば「マヨネーズ」。マヨネーズも液体ドレッシングと同じく水と油の成分で構成されているのに、液体ドレッシングのように分離しないですよね?なぜならば、卵黄由来の「レシチン」という天然界面活性剤(乳化剤)が使われているからです。もちろん、この天然界面活性剤は、食べて害になるということはありません。
【主な天然界面活性剤】
・卵黄レシチン
・大豆レシチン
・ガゼイン(乳製品に含まれる)
・サポニン(植物やヒトデ、ナマコが持っている成分)
特にサポニンは、洗浄剤がなかった時代には天然のせっけんとして使われていました。
合成界面活性剤
「合成界面活性剤」は人が化学的に合成して作った界面活性剤です。
合成界面活性剤は、時代を追うごとに改良が加えられ、洗浄効果などが高いものもあります。問題に上げられるのは、この合成界面活性剤というわけです。
3.合成界面活性剤について知ろう
合成界面活性剤は、私たちの生活に密着しているためなくならないものであり、すべてが悪いものだと決めつけて排除すると私たちの生活に支障が出ます。合成界面活性剤のことを理解して、うまく付き合っていくことが重要なのです。
【用途】合成界面活性剤は何の目的で使うのか?
商品を見ていくと、私たちの生活にいかに密着しているかが分かります。
洗浄作用
洗顔料やシャンプーなどの目的ですよね。
乳化作用
前に説明した通り、性質の違う成分を混ぜて均一にするためです。
乳液、クリーム、化粧水、ワックスなどがあります。
発泡作用
混ざり合わない物質を混ぜて気体と液体を一緒にして泡を発生させる作用があります。
洗顔料、ヘアムースなどがあります。
分散作用
混ざり合わない物質を液体の中に全体的に分散させて、成分を均一にします。乳化作用と似ている部分がありますが、ファンデーション・日焼け止めなどがイメージするとわかりやすいですかね。
浸透作用
濡れやすくして、対象物とのなじみをよくする作用で、美容液や育毛剤などがあります。
殺菌作用
表面に負の電荷を帯びており、電気的に吸い付いて洗い流します。逆性石鹸などがあります。
帯電防止性
膜を作って滑らかにすることで、静電気の発生を抑えます。ヘアリンスやトリートメントがイメージしやすいですね。静電気防止スプレーなどもそうです。
【化学的分類】合成界面活性剤の化学的分類
化学反応などを用いて新たに人の手で製造されたかで分けると5つに分類されます。
1.石けん系
【主な石けん系成分】
・ラウリン酸Na
ココナッツオイルやヤシ油に主に含まれ、主に石けんに使用される
2.アミノ酸系
アミノ酸を一部に含む界面活性剤です。
【主なアミノ酸系成分】
・N-アシル-L-グルタミン酸ナトリウム(別名「ココイルグルタミンン酸Na」)
・ラウロイルメチルアラニンNa(低刺激成分)
3.脂肪酸エステル系
主に、
・脂肪酸とグリセリン(石けんの副生物)を反応させて作る
・脂肪酸とショ糖を反応させて作る
ものがある。
【主な脂肪酸エステル系成分】
・ショ糖脂肪酸エステル(別名「ラウリン酸スクロース」)
ショ糖と食用油脂を分解して得られる
4.高級アルコール系
高級アルコールを原料として作られます。
・脂肪酸から作る方法
・石油から合成する方法
の二通りの生成方法があるため、天然系にも石油系にも分類できます。
【主な高級アルコール系成分】
・ラウリル硫酸Na
低刺激でシャンプーや化粧品に使われる
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル(別名「ラウレス硫酸Na)
低刺激でシャンプーや洗剤に使用される
5.石油系
石油が原料の界面活性剤です
【主な石油系成分】
・α-オレフィンスルフォン酸Na(AOS・別名「オレフィン(C12-C14)スルホン酸Na」)
洗浄力が強いので洗濯洗剤として使われたり、サロン用のシャンプーに使われたりする
・直鎖アルキルベンゼンスルホン酸Na(LAS)
洗浄力が強い
【原料分類】合成界面活性剤の原料分類
原料によって分類した場合、以下のように分けられます。注意点は、高級アルコール系合成界面活性剤は、天然系の原料を使うこともあれば、石油系の原料を使う場合もあります。石油系の原料を使った場合、石油系合成界面活性剤と呼べることにもなります。
天然系合成界面活性剤
1.石けん系
2.アミノ酸系
3.脂肪酸エステル系
石油系合成界面活性剤
4.高級アルコール系
5.石油系
「天然系合成界面活性剤」と比べて「石油系合成界面活性剤」は…
・コストが比較的安価
・大量生産できる
・洗浄力が高い
・機能性が高い
つまり、「石油系合成界面活性剤」の方が使い勝手がいいのです。「石油」と聞けば、人間の体に悪いイメージがありますが、実際のところはどうなのでしょうか?
【安全性】「石油系合成界面活性剤」は危険なのか?
もともとは「石油系合成界面活性剤」は名前の通り「石油」から作られていました。しかしながら、最近はそうではないようですよ。
最近は「石油系合成界面活性剤」の原料はもっぱら植物性オイル
最近の「石油系合成界面活性剤」は、植物性オイルを原料に作られることが多いのです。
代表的な例でいうと、「ヤシ油」という植物性の油と還元剤を一緒にして生成すれば、「石油系合成界面活性剤」ができるのです。では、なぜ石油由来ではないのに「石油系合成界面活性剤」と呼ばれてしまうのか?
答えは、石油系の合成界面活性剤かどうかを、原料が石油かどうかで名付けているわけではなく、「できた物質の構造で名付けられるから」なのです。そのため、原料が「石油」でも「ヤシ油」であっても、できた物質の構造が「石油系」であれば、原料関係なく石油系合成界面活性剤となるのです。ですから「石油系合成界面活性剤」については、名前とイメージが先行して悪いイメージを持ちやすいと言えます。
4.合成界面活性剤とどう付き合っていくか?
天然界面活性剤は、もともと自然界にある物質ですから、天然成分が人体に影響を与えることはありません。そういう意味で安心だと言い切ることができます。
合成界面活性剤は、人工的に合成された物質で自然界には存在しません。自然界に存在しない物質で「未知」のことが多いからこそ、人々はそこに「リスク」や「不安」を覚えるのです。
ですから、「何が起こるか分からない」「少なからずリスクがあるかもしれない」と思う方は、無添加商品や天然界面活性剤の商品を選んで使った方が、絶対的な安心感を得ることができます。
ただし先にも言いましたが、現代の生活において、生活に関わるすべてのものを、一切の添加物を使っていないものにそろえる、ということは大変難しく、時には大変な困難を伴います。
例えば、農薬を使っていない無農薬野菜は、一般的な野菜よりかなり高いでしょう。添加物を使っていないものをだけを食べるとなると、外食できる場所も限られるでしょう。オーガニック化粧品だってかなり高くなりますよね。
【確認】合成界面活性剤の存在意義と現状
【利点】「合成界面活性剤」はもともと「人々の生活を豊かにするために生まれたもの」である
合成界面活性剤がないと、化粧品も洗剤も育毛剤も美容液も作ることが困難です。
例えば、美容液を例に考えてみましょう。
みなさんは「美容液が肌に浸透するかどうか」って注目しますよね?なぜなら、美容成分が肌に浸透しなければ意味がありません。その美容成分は、美容液中に偏ることなくバランスよく液体中に存在しています。使うたびに、成分が薄かったり濃かったりすることがないでしょう。
美容液一つ使うことにおいても、「肌に浸透させるために」「液体中の成分配合率のバランスを取るために」合成界面活性剤が使われるのです。
合成界面活性剤を使わない美容液では、美を保つことが困難になる可能性があるのです。
防腐剤についてもそうです。「防腐剤が入っていない方が安心だ」という人もいるでしょう。でも、防腐剤が入っていなければ、当然腐りやすいわけです。食べ物において、「腐りやすいから安心だ」とは言いませんよね。化粧品などにおいてもそうです。「防腐剤が入っていない=製品が腐りやすい」というリスクがあることを忘れてはいけません、中身が腐ってしまった製品を使い続けることの方が怖いと思いませんか?
【利点】「合成界面活性剤」は日進月歩で日々進化していく
合成界面活性剤は、日々研究されていて、どんどん新しい成分が生まれます。改良に改良を重ねてより確かな安全性を持ちます。昔の合成界面活性剤より、当然今の合成界面活性剤の方がはるかに安全です。確かに昔は今ほど化学が進歩していなかったわけですから、粗悪な商品が存在したことも事実です。科学と化学が進歩した現代において、昔のイメージを持ち続けることの方が危険だと言えます。
【欠点】「合成界面活性剤」は体に悪いと随分後になってわかることがある
実は、合成界面活性剤が体に害があるかどうかは、すぐに分からないことがあります。随分後になって「人体に害を与える可能性がある」ことが分かることもあります。つまり、その成分が人体に害を与えるかどうかは、時間が経たないと明らかにできない側面があるのです。そもそも、化学成分は、何十年単位で研究や試験を繰り返さないと、長期使用による有害性は確認できません。
その点を考えると、無添加商品は絶対的な安心感があります。
【欠点】「旧表示指定成分」における落とし穴がある
「旧表示指定成分」とは、体質によってアレルギーを起こす可能性がある、または、発がん性の可能性がある成分で、1980年に厚生省によって告示されました。この旧表示指定成分を製品に使う際は、パッケージや商品に明記することが義務付けられていました。
1991年からは、旧表示指定成分の明記は廃止され全成分表示が義務化されました。
つまり、1991年前までは、明記されている成分が旧表示指定成分かどうか分かりやすかったと言えますが、現在のように全成分が書かれている場合、どれが旧表示指定成分なのかを自分で確認する必要があります。同じ成分であっても旧表示指定成分の名称と違う場合も多々ありますから、判断が難しいときもあります。
また、旧表示指定成分がなかったからと言って安心できないのが本音です。先に書いたとおり「化学成分は、何十年単位で研究や試験を繰り返さないと、長期使用による有害性は確認できない」ものなので、人体に害をもたらす可能性のある新成分が使用されていないとは言い切れないのが現状です。
【考え方】合成界面活性剤は「正しい理解」が大事
体質に合わないと感じたらただちに使用を中止する
合成界面活性剤は、使用者の体質によって影響が出る・出ない、または、影響の出かたが異なります。平気な人もいれば、そうでない人もいます。異変を感じたら使用をやめましょう。その際に、成分を確認しておくと、次に使用する商品の参考にもなります。
すべての合成界面活性剤を排除することは、逆に「商品の安全性を低下させる」ことにもなりかねない
防腐剤が入っていなければ腐る危険性が高くなる、と先にも言いましたが、合成界面活性剤が入っていないことで、他の何らかのリスクが発生する可能性があることは間違いありません。例えば、乳化剤としての役目がある通り、合成界面活性剤が入っていないことで品質や効果が低下するリスクがあります。つまり、合成界面活性剤を排除することは、逆に「安全性」を失うことにもつながりかねないということです。
「安全性」が高くて「効果」のない商品なんて買いたいと思わないですし、逆に「効果」が高いのに「安全性」がない商品を買いたいとも思わないはずです。買いたいのは、「安全性」も「効果」も高い商品です。「界面活性剤」が入っているからといって、そのすべての商品を排除してしまうと「安全性」も「効果」もある商品を排除することに繋がることになるかもしれません。
物の「いい・悪い」は「安全性」と「効果」のバランスで判断することが大事
つまり「無添加だから」「界面活性剤が入っているから」という理由で商品を選ぶよりも、
商品を選ぶ際に、
・自分にとって、どういう点を安心だと判断するのか?
・自分にとって、どういうこと(もの)が必要なのか?
・自分の希望や目的は何なのか?
を考えることが、重要です。
う~ん。難しいかもしれませんね。そうなんですよ。合成界面活性剤とうまく付き合っていくのはとっても難しいことかもしれませんね。私は、クチコミやいろいろな人のいい意見・悪い意見を参考にするようにしています。